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この記事はグラフィックデザイナーで姓名判断研究家のネコヒートが書いています。
今回は「名前の世界」をお送りします。
昨今、夜露死苦ネーム(キラキラネーム)が何かと話題になることがありますが、なんと130年以上昔に、我が子に夜露死苦ネーム(キラキラネーム)らしき命名をしていた人物がおりました。
名前業界では有名な話ですが、「舞姫」や「高瀬舟」などで有名な小説家・森鴎外です。
文豪と呼ばれる彼が、5人の子どもに付けた名前とはどんな名前だったのでしょうか?
格調高い難解すぎる名前なのでしょうか?
それともあっさり系?
そして、夜露死苦ネーム(キラキラネーム)を付けた意外な理由とはなんだったのでしょうか?
まずは、森鴎外の人物メモからです、
ドーゾッ!
人物メモ
- 森鴎外(1862年2月17日~1922年7月9日。60歳没)
- 本名:森 林太郎(もり りんたろう)
- 出身地:島根県津和野町
- 職業:小説家、陸軍軍医など
- 小説代表作:『舞姫』『雁』『山椒大夫』『高瀬舟』など
- 経歴:10歳の時に父と上京。ドイツ語を習得しながら、わずか11歳で東京大学医学部予科に入学。卒業後に陸軍軍医となる。その後、衛生学を学ぶためにドイツへ留学。帰国後、軍医のかたわら小説を執筆。
夜露死苦ネームをつけた理由
鴎外が子どもたちに夜露死苦ネーム(キラキラネーム)をつけた理由は、ドイツ留学の際、鴎外の本名である「森 林太郎」という名前を仲間になかなか覚えてもらえなかったことに由来するそうです。
とくに、ドイツの人は「りんたろう」の発音が難しかったようですね。
そういう苦い経験が、子供たちに夜露死苦ネーム(キラキラネーム)を付けた動機だと言われています。
さて、次は実際にどんな名前を子供たちに付けたのか見ていきましょう。
子供たちの名前
鴎外には5人の子どもがおりました。
- 於菟
- 茉莉
- 不律
- 杏奴
- 類
いずれの名前も、外国人の名前にあるような「音」で命名しているところが鴎外のこだわりポイント。
いつか海外に出た際に、名前で苦労しないようにという鴎外の配慮、思いやりだったのでしょうね。
長男
於菟
鴎外は長男の名前を「於菟」としました。
寅年生まれであったため、中国の古書から「虎」を意味する「於菟」という名前にしたらしい。
外国語の音だと、「オットー」ということでしょう。シャレてはいますね。
ただし、本格的な夜露死苦ネームとは言いがたい。
古書から取ったにせよ、「於」も「菟」も、現代では難解な漢字かもしれませんが、「於」はもともと「~において」という使い方をする漢字で「お」と読めますし、「菟」もウサギを表す漢字なので「と」と読むことができます。
方法論としては、「音」に漢字を当てただけで、現代的な観点から観ると、かなり弱い方の夜露死苦ネームと言えそうです。
しかし、当時は、斬新な夜露死苦ネームだったのでしょうね、きっと。
その後、森於菟さんは解剖学を専門とする医学者として活躍しました。
長女
茉莉
鴎外は長女の名前を「茉莉」としました。
外国語の音だと、「マリー」ということでしょう。
また、中国語で植物の「ジャスミン」を意味する漢字になります。
こちらは現代ではよく見かける名前ですよね。
そういう意味では、夜露死苦ネームとは言いがたいかもしれません。日向坂46の森本茉莉さん、声優の岡本茉莉さん、バレーボール選手の森田茉莉さん等多数おります。
その後、森茉莉さんは小説家、エッセイストとして活躍。「日本エッセイスト・クラブ賞」や「泉鏡花文学賞」を受賞しました。
次男
不律
鴎外は次男の名前を「不律」としました。
外国語の音だと、「フリッツ」ということでしょう。
こちらも「音」に漢字を当てただけなので、現代感覚で言うと、そこまで強力な夜露死苦ネームにはなっていません。
そして、字の意味がちょっと悪いのが気になります。
「不律」は「ルールや法を守らないこと」「不正行為」の意味があり、文豪が付けたにしては「?」な命名になっているようですね。うーん。
もっといい漢字がありそうなだけに、残念。
ちなみに、不律くんは生後間もなく百日咳にかかりお亡くなりになっております。
次女
杏奴
鴎外は次女の名前を「杏奴」としました。
外国語の音だと、「アンヌ」ということでしょう。
こちらも「音」に漢字を当てただけなので、バリバリの夜露死苦ネームとは言いがたいのですが、「奴」の文字が「身分の低い者さす漢字」だったり「人をいやしめて言う漢字」のため、文豪が選んだにしては「もっと他に良い漢字がなかったのかなあ」と思ってしまいます。ちょびっと「悪魔くん臭」がしますね…。
その後、小堀杏奴さん(旧姓:森杏奴)はエッセイストや翻訳家として活躍したそうです。
三男
類
鴎外は三男の名前を「類」としました。
外国語の音だと、「ルイ」ということでしょう。
こちらの名前は現代でもたまに見かける名前ですよね。モデルでタレント・栗原類さん、居酒屋放浪記で有名な吉田類さん、ハンドボール選手・江頭類さん、演劇評論家・津田類さんなど。
その後、森類さんは随筆家として活躍したそうです。
まとめ
約130年前に名付けられた「夜露死苦ネーム(キラキラネーム)」を5つほど見ていただきましたが、いかがだったでしょうか?
現代感覚で言うと、そこまで「夜露死苦」な感じはありませんでしたが、きっと当時では「外国語の音」を持った、かなり斬新な夜露死苦ネームだったのではないでしょうか?
しかし、どの名前も「音優先」で作った名前だから、今でも読むには読めるし、自分の経験した苦労を子供に味合わせたくないという鴎外の思いやりも感じられますよね。
こういう名付け、命名法もあるんだな、という部分で皆さんの参考になれば、と思います。
さて、ネコヒート姓名判断では以下の記事に、最新鋭の「夜露死苦ネーム(キラキラネーム)」を問題形式で掲載しています。
例えば、次の名前は、某有名スポーツ選手の名前。
読めますか?
“緑夢”
この名前は、もっとも難解な、最新の型に近い夜露死苦ネームと言っていいと思います。
そのまま読んでも、音を頼りに読んでも、読めません。
独特の「ヒネリ」が必要なのです。
このヒネリの感じが、なんか新しい。
とんちクイズっぽいのです。
正解はさきほどの記事に掲載されていますので、20問程度ですので、お時間のある人はぜひ「現代の夜露死苦ネーム」問題集に挑戦なさってみてくださいね。
それでは、今回の記事は以上で終了です。
〈終〉