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この記事はグラフィックデザイナーで姓名判断研究家のネコヒートが書いています。
今回は「名前の時間」です。
前回の「悪魔くん命名騒動」に続きまして、名付けが巻き起こした実話をご紹介しましょう。
みなさん、「鼎」ってご存知ですか?
読み方は「かなえ」です。
これは、三本足の鉄釜のこと。
いわゆる古代中国で「神器」として扱われ、ひじょうに縁起が良いものとされてまして、「易経」でも「火風鼎(かふうてい)」という吉卦として登場します。
「鼎の軽重を問う」なんていう言葉もここが語源。
しかし、こんな良い言葉を名前にもらったにも関わらず、何かの行き違いで親子の○し合いにまで発展してしまった事件がかつてあったのです。
たかだか「名前」がきっかけで人の命が損なわれるなんて考えられないと思う人は多いでしょうが、実は、命名者であるお父さんは、ひじょうに大きなミスを犯していました。
そして、これは、夜露死苦ネーム(キラキラネーム)をつけがちな人に多くみられるミスだったのです。
それではまずは事件概要からです、
ドーゾッ!
事件概要
ときは2000年9月某日。
宇都宮市に住む吉田忠一さん(78歳)の家で事件は起きました。
敷地内にあるプレハブ小屋で、かわら職人で長男の吉田要(53歳)が父・忠一さんの腹部を包丁で刺したのです。
忠一さんは、出血多量により○亡。
要はいったん逃亡を図りましたが近所のパチンコ屋で逮捕されました。
近所の人の話では、日頃からふたりの諍いが絶えず、かなり険悪な仲だったらしいのです。
その後の裁判で要は、懲役14年(求刑15年)の判決を食らったそうな。
名前の苦労
逮捕後、要が語ったところによると、「人生がうまくいかないのは名前のせい」で、子どもの頃から「鼎」という名前を、「字が難しく、女の名前みたいだ」と嫌がっていたそうな。
要するに子どもの頃に、クラスメイトからバカにされたり、イジメられた経験があったのかもしれませんね。
そして、約20年前に「鼎」から「要」に改名。
しかし、改名したにも関わらず、その後、パチンコなどのギャンブルにのめり込み借金に追われ、生活は荒む一方…。
自分の自堕落な生き様を棚に上げ、要は、事あるごとに「父親の付けた変な名前のせいだ」と恨みを募らせ続けていたといいますから名前の恨みは恐ろしいものですね。
改名後の荒んだ生き方は、こちらから見ると「名前のせいにしてるだけ」のようにしか見えませんが、ひょっとしたら父と子の間には、常日頃から以下のようなやり取りがあったのではないか、と想像します。
父「名前は望み通り変えたんだろ?いい歳なんだから、いつまで名前のこと言ってるんだ、シツコイぞ!いい加減にしろ!」
要「いや、アンタが変な名前を付けたから、人生の初めからおかしくなったわけで、やっぱり今のオレになったのはアンタのせいだ!」
これから命名をお考えの方は、くれぐれもお子さんには、「本当の意味で良い名前」を付けてあげてくださいね。
50年以上も引きずることがあるのが、名前の怖さなのですから。
鼎は夜露死苦ネームか?
さて、今回登場した名前「鼎」は問題があったのでしょうか?
ネコヒート姓名判断では、名前に使用した漢字、また、読み自体は夜露死苦ネーム(キラキラネーム)ではないと考えます。
例えば、「鼎」の字を使用し「よしのり」なら、夜露死苦ネーム(キラキラネーム)かもしれませんが、実際に存在する漢字「鼎」を使用し、おまけに、通常の読みがそのまま名前「かなえ」になっているので、この名前に関して言えば問題ありません。
結論:夜露死苦ネーム(キラキラネーム)ではない!
最大のミス
父・忠一さんの最大のミスは、わざわざ男の子に、「かなえ」という女の子の名前のような「音」を持つ漢字を付けたことの一点に尽きます。
おそらく小さかった頃の鼎君は、クラスメイトにいじめられたり、バカにされたり、「女の子みたいな名前ね」と近所の人に言われたり、病院の待合室で「あれ、カナエなのに男じゃん」みたいな好奇の目で見られたり、とくに注目を浴びることが苦手なタイプの性格だったら(名前のせいで)地獄のような日々を過ごしていたに違いありません。
一方、父・忠一さんにしたら、「鼎」は、会心の名前だったのでしょう。
「神器」をルーツに持ち縁起が良く、人と協力しあい有意義な幸福人生を作り出す、そんな意味をたった一文字で表す漢字を見つけたのですから。
しかし、現実は違いました。
息子から50年以上恨み続けられた挙げ句に包丁で刺され○亡。さぞかし無念だったでしょうね。
父・忠一さんにおける命名失敗の原因は、「想いばかりが先走った」名付けをしたこと。
そして、相手の気持ちを汲めなかったこと。
名前自体は夜露死苦ネーム(キラキラネーム)ではありませんが、名付けするときの父・忠一さんのメンタリティはまるで、
- 情熱と想いが先行
- 相手の気持ちは考えない
- まわりがどう思おうと気にしない
という、夜露死苦ネーム(キラキラネーム)をつけたがる人にありがちな精神状態だったのかもしれません。
これ、ありがちな話なので、命名する人は意識して注意することが必要だと思います。
まとめ
「父の想い、届かず…」という残念な事件でしたね。
ひじょうに良い意味の名前を付けても、受け取り手に届かなければ、意味はありません。
今回の事件における最大のミスは、男の子に対して「かなえ」という、女の子にいそうな「音」を命名してしまったことでしょう。
こういう名前を付けた場合、とくに子どもの頃からかわれたり、イジメにあったりする可能性があって、付けられた方は地獄を味わうことが少なくありません。
しかも、日本において「改名」は簡単にできるものではないため、命名はやはり慎重に行うべきです。
もし、今、命名をお考えの人がいましたら、自問してみてください。
「想い先行型」の命名になっていないだろうか?
相手は名前にどういう感情を抱くのだろうか?
嫌がるような名前になっていないだろうか?
相手の気持ちになって「想像力」をめいっぱい駆使して今一度考えてみてください。
「俺なら気にしない」
「私なら大丈夫」
ということではなく、相手の人格になりきって本気で考えてあげることが大切なのです。
そういう冷静に考える時間を、あえて設けることこそ、良い名前を創るコツだとネコヒート姓名判断は考えます。
今回は以上で終了です。
〈終〉